事例のポイント
こちらの企業様では、複数部署にまたがる新システム開発において、仕様の確定が難航し、プロジェクトが停滞する状況に陥っていました。 そこで、短いサイクルで開発と検証を反復するアジャイル開発方式の導入を提案し、実際に動作するシステムを通じて得られたフィードバックを、次フェーズの開発に即座に反映する手法を採用しました。 このアプローチにより、仕様検討の先送りを回避して計画通りの開発完了を実現するとともに、ユーザー要望を的確に反映したシステムの構築が可能となりました。
自動車部品製造メーカーであるD社様では、社内の関係部署間における情報共有の促進と製品開発におけるリードタイムの短縮を目的として、製品開発情報システムの再構築を検討されていました。
しかしながら、対象システムが複数の関係部署にまたがっていたことから、要件・仕様の確定が難航し、検討の先送りが繰り返される状況が続いていました。
その結果、要件定義※3や設計フェーズが長期化し、最終的なシステムカットオーバー※4まで到達できない可能性が高まっていました。
また、従来のシステム運用では、部署間で紙媒体による情報伝達が行われていたため、情報共有の遅延や入力作業の重複が発生し、業務効率にも大きな課題を抱えていました。
D社様におけるシステム開発を成功に導くためには、「要件を提示する」「仕様を決定する」ことを先送りせず、計画的かつメリハリのある開発プロセスに乗せることが不可欠と判断しました。
そこで当社では、開発サイクルを細分化したうえで、コア機能から優先的に開発・検証を実施し、 得られたフィードバックや明確化された要件を次の開発サイクルに反映することによって、 柔軟かつ着実にシステム開発を進めることが可能となる「アジャイル開発方式」※5の導入を提案しました。
本プロジェクトでは、アジャイル開発手法の一つであるスクラムを採用しました。当社は、以下のプロセスを踏みながら、常に変化を受け入れる姿勢で柔軟に開発を推進しました。
①スクラムチームの体制構築
D社様の情報システム部をプロダクトオーナー※6とするスクラムチームを編成し、常に協働して開発を進める体制を構築しました。
②スプリント期間の設定と進行管理
開発サイクルであるスプリント※7を4週間に設定し、各スプリントにおいて、計画・要求・設計・実装・テスト・評価の工程を一巡させる運用を行いました。
③ポイント制の導入による機能選定の柔軟化
開発メンバーの1日分の作業量を1ポイントとするポイント制を導入し、次回スプリントの対象機能は予算ポイント内でD社様が自由に取捨選択可能な仕組みとしました。
アジャイル開発方式を採用し、以下の成果を実現しました。
① 検討の先送り回避
各スプリントで稼働する機能を確実に完成させる必要があったことから、検討の先送りが発生せず、スケジュール通りにシステムのカットオーバーを実現することができました。
② クライアント目線でのシステム開発
プロジェクト初期段階からシステム稼働による検証を行うことが可能となったため、D社様より「確認しやすい」と高評価をいただきました。くわえて、追加要件や仕様変更などのフィードバックにも柔軟に対応することができました。
③ 不必要な検討の回避
システム全体の構造や設計を専門とする技術者(システムアーキテクト※8)をスクラムチームに配置し、完成後の全体イメージを事前に把握したうえで、優先度の高い機能から着手しました。これにより、不要な機能まで検討してしまう無駄を避け、効率的で的確な開発を推進することができました。
※1 VB.Net(Visual Basic .NET):VB6の後継としてMicrosoftが提供するプログラミング言語です。.NET Framework上で動作し、保守性・堅牢性に優れた業務システムの開発が可能です。
※2 スクラム:アジャイル開発※3の手法の一つであり、チームで協力して開発を進めるためのフレームワークです。役割・プロセスが明確に定義されており、開発体制の自律性と柔軟性を支えます。
※3 要件定義:システム開発において、利用者が必要とする機能や仕様を明確化するプロセスです。この段階の精度が後続工程に大きく影響するため、非常に重要なフェーズとなります。
※4 カットオーバー:システムを本番環境に移行し、運用を開始することを指します。既存環境から新システムへの切り替え時には、安定性と業務継続性が問われます。
※5 アジャイル開発:計画・設計・実装・テストなどの開発プロセスを短いサイクルで繰り返す開発方式です。顧客からのフィードバックを都度反映しやすく、変化に柔軟に対応可能な点が特長です。
※6 プロダクトオーナー:スクラム開発においてプロジェクト全体の責任を担う役割です。顧客要求を整理・優先順位付けし、チームと連携して開発方針を導きます。
※7 スプリント:スクラムにおける1つの開発サイクル期間を指し、通常2~4週間で設定されます。各スプリントでは、計画から実装・テスト・評価までを一巡します。
※8 システムアーキテクト:システム全体の構造・設計を専門的に担う技術者です。業務要件と技術要件を踏まえながら、最適なアーキテクチャを策定します。
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